T・Cの開発技術(兵器関連)一覧②

【Another Materials】by 戒闢


【Tw-CW-014 カロリックカービン】
 トロピカル・カンパニーの携行火器開発部門が主にウィッチ向けに開発した個人携行兵装。同社の商品の中ではPSに並ぶ古株に相当するが今なお生産されているロングセラー商品。開発の経緯については、テスラ・ドライブの採用で機動力が上がった航空ウィッチが装備する従来の大型銃ではその大きさと重さゆえに、テスラ・ドライブによる機動に振り回されるケースが浮かび上がった事が原因とされる。 そこを憂慮した開発陣営はテスラ・ドライブを搭載したウィッチ用に、その名の通り騎兵銃(カービン)らしい取り回しを重視したコンパクトで軽量な造りを持つ本銃を生産する事にしたのだが、当初はかなりの突貫作業が目立った。

 というのも、航空ウィッチが大型銃を好むのは、対ネウロイを意識したためであり、携行性より火力を重視していた事による。そしてそれは多元世界に来てもなお、ウィッチたちは何より火力がある兵器を求めていた。 また、当時は小型汎用仕様テスラ・ドライブが完成間近に控えていた事もあり、急ぎウィッチたちが求めるような火力を持ち、即実戦投入可能でかつ量産性に優れた携行火器を生み出す必要があった。生産性を考慮したため、使われる銃弾は通常規格の弾丸と同一である。だがこれでは航空ウィッチが求めるような火力は出せない、そこでその銃弾を込める弾倉(マガジン)に銃弾とは別に、前述したカロリック・コンバーター開発陣営の一部人員から技術協力を得て開発したカロリックを圧縮して詰め込む“C-Pack”を新規開発、それを弾倉と一体化させた。これは発射プロセス時に銃弾と共に詰め込まれた弾倉から微量のカロリックを噴出させ、それを射出された銃弾が纏うことで対象への貫通力、そして攻撃力を高め、被弾箇所をカロリックによる熱で融解させダメージを与えるという仕組みとなっている。

 これにより、携行性と火力を高め、かつ量産性もある程度意識したウィッチによって理想的な銃――が何とかカタチになったものの、やはり急造仕様であるため、開発当初は問題が多々発生した。銃身がカロリックによる熱で融解、あるいは銃弾の暴発などなど……三度にわたる仕様変更を繰り返した結果、銃身はEG合金を採用し耐熱効果と銃身の変形を防ぎ、C-Packから供給されるカロリックはチューブを通して銃口部のマズルキャップで工程を行うように変更された。 また徹底して排熱に拘ったために、特に銃身部分の肉抜きは徹底されており、その見た目から前線では“スケルトン”と呼ばれる事も。

 なお、主にウィッチ向けと前述したように、本銃は基本的に使用者を選ばない。本銃の開発以降、カロリックを用いた携行兵器は次々製作されていくが、特定の能力や装備も無しに、かつ安価で扱いやすいカロリック兵器は本銃くらいしか存在しない。それゆえにロングセラー商品となっており、兵器部門における販売実績数だけでいえばトロピカル・カンパニー随一である。現在もなお改良は進められ、攻撃性能は据え置きでより堅牢で安全性を高めたニューモデル(チューブが廃止された事が大きい)が生産されている。

【TDw-HCW-001 ヴァリアブルカロリックライフル(VCR)】
 カロリックカービンが正式量産された時期の前後に、デュノア社と共同で開発したカロリック携行火器。
元はトロピカル・カンパニーが主催した連携企業一同による交流会において、トロピカル・カンパニーの
携行火器開発部門の新人たちとデュノア社の新人たちが意気投合し、新たなカロリック兵器について
意見を出し合ったのが始まりとされる。
 だが、その新人たちのちょっとした暴走気味の熱意に何か感じたのか、影で見ていたジ・エーデルが
「面白そうだ」という理由だけで、デュノア社の上層部と話をつけ、両社の新人たちを招集――
茫然とする新人たちにこれまでにない、斬新なカロリック携行火器を開発せよとの通達が
降りたのが本銃開発の始まりとなった。
 ジ・エーデル、そしてデュノア社としては、新人たちに開発経験と創造力を養わせる、
いわば“共同実践研修イベントの一環”として捉えていた。
 よって仮に失敗してもそれはそれで経験値になると判断しての事である(もっともそれが新人たちに知られる事はなかったが)。

 これまでにない斬新な携行火器――艦娘が使う熱素魚雷、ウィッチたちが使うカロリック・コンバーターや
カロリックカービンの開発で、すでにカロリック技術は既に固定化の方向へと向かっていた。
 よって単にカロリックを使うだけでは斬新と称される事ないだろうとその事はすでに百も承知だった
両社の新人たちはひとまずバレットレス――カロリックカービンとは異なり、
実弾を一切使わないカロリック仕様の携行火器の開発に乗り出した。
 それ自体はウィッチたちが使うカロリック・コンバーターからの各種攻撃がそれに該当するが、
それはウィッチたちの魔力があってこその一種の事象操作である魔力を持たない者でも実弾無しの
カロリック兵器が使用できることを最低限のラインと定めた。
 幸い、サイズの制限は特に無かったので、一般兵ではなくPSユーザー、
ないしはISユーザーが使える携行火器のサイズを念頭に置いた。
 大型化すればそれだけ余剰が出来て開発しやすいからである。

 カロリックカービン開発から誕生したC-Packの登場から暫くして、
その大容量モデルが開発されたこともあり、新人たちは経験不足を熱意で補いながら
(加えて、密かに彼らを裏で支えていたベテランたちと共に)開発を進めていく。
 質量のある実弾、そして火薬を用いない以上、従来の銃器のようなシステムは一切必要ない、
また熱量はあるが質量がないため衝撃力不足、そして射出の際の初速をどう得るのかが課題となったので、
方式はEML――すなわち、電磁加速砲の概念を用いる事となった。

 初期段階は大型艦艇装備としてすでにレールガンシステムは実用化されていたので、
それを携行火器までリサイズする事から始まる。
 カロリックカービンにも使われた耐電・耐熱に優れるEG合金により、素材そのものに問題はなかった。
 形状はグリップやスコープが取り付けられた超小型レールガンといったもので、銃本体はこれで進められた。

 問題はここからカロリックをどう用いて攻撃手段としてどう射出するかという点だが、
ここで新人たちはあるISに目を付けた。
 中国の第三世代型IS――“甲龍”の特殊武装、『龍咆』である。
 同装備は空間自体に圧力をかけ砲身を作り、衝撃を砲弾として撃ち出す衝撃砲とされる。
 開発人が着目したのはこの空間自体への圧力であった。銃内部でC-Packから供給された
カロリックに圧力をかけ、カロリックを内包した衝撃弾をレースシステムで撃ち込む――という流れを考案したのである。

 甲龍の空間圧縮技術の代用として、徹底して機能を絞りコストを抑えて小型化したグラビコン・システムを銃内部に押し込み、
それを使いカロリックを空間ごと圧縮、衝撃熱弾として射出する流れが完成した。
 携行火器の限界もあり、いかにカロリックを用いようとも甲龍の同装備ほどの
威力は到底得られなかったが、それでも攻撃手段として確かに機能する事はできた。
 ただしそこは開発者としての意地か、C-Packからグラビコン・システムを通って
射出するという仕組みを徹底して単純化し、射出過程をシンプルにすることで
連射性能だけは上回るようにと、軽機関銃ばりの連射性を実現させる。
 弾速もレールシステムを用いているだけはあり凄まじく、サイズこそPSやISが用いる事を
念頭に置いているので大型化したが、質量そのものは従来の携行火器とさほど変わらない程度まで抑える事に成功した。

 これだけでも十分に完成したと言えるのだが、熱意を通り越して熱狂じみてきた
新人たちはまだ何か詰め込める事はないかと模索。
 そしてある一人の新人がふと声をあげた「可変銃(ヴァリアブルガン)を作ろう」と。
 具体的には「銃身となるレールシステムを実戦で自由に伸縮できるようにして、遠近両距離対応の銃を作る」というものだ。
 パーツを交換することで、その役割を変えることのできる銃器は旧西暦より存在したが、
それは実際の戦場の最中におけるリアルタイムではほぼ不可能で、基本的に後方で行われるのが精々であった。

 だがレールシステムを用いた本銃ならば僅かな改修でそれも可能となるはず――
そう考えたその新人の案は熱狂溢れる同僚たちに支持され実行されていった。
 そうして完成したのがこのヴァリアブルカロリックライフル(VCR)である。

 基本的なサイズは大きめな突撃銃程度だが、銃本体から伸びる二枚のレールを前へ
引き伸ばすことで銃身が大型狙撃銃並の長さを持つようになった。
 この状態のVCRはグラビコン・システムがカロリック及び空間に与える圧縮力も高くなり、
加えての弾速の向上も見込め極めて強力な貫通力を発揮する。
 また銃身が伸びた分、弾道も当然安定し、正しく狙撃銃として機能することとなり、
試射実験から、最大射程で8,000メートルに達するほどになった。

 こうして晴れて新人たちの熱狂により完成を見たVCRだが、
確かに斬新なカロリック携行火器であると太鼓判を押されたものの、
実用性という部分でははっきり言って疑問が多く残っていた。
 やはりというかカロリックに加えてグラビコン・システムまで使った関係上、
コスト高が否めず整備性もそれに合わせ悪化、PSやISといった機動兵装用装備という
こともあって需要もそう高く見込めないと商品として、そして軍が用いる携行兵器としては些か問題児であった。

 しかし遠近両対応で、かつ大きさのわりにそう重くない……何よりカッコいい、と
機動兵装使いの中にはそれなりに“ファン”がいる模様で、一定の人気があるという
企業としては扱いに困った兵器となってしまった。
 現在はベテランたちのプランも取り入れ、なんとか性能低下を抑え、
少しばかり小型化してコストを下げたニューモデルが出回ったことで、完成されつつある。
 ただ、下手に小型化したせいで、今度はウィッチたちにも扱えるようになったため、
ウィッチの中にも本銃のファンが現れるようになってしまった。
 企業としては需要が増えたのでいいが、頭を抱えるのは軍組織である。
相変わらず整備性に難があるため、運用コストが更にかさむようになってしまったのだ。
 性能は確かなので、活躍は上げているが、それだけ金が飛ぶ――こうして新人たちの熱狂の具現体は、
立場によって人気と不人気がハッキリと別れる名(迷)銃となってしまったのであった。


【TMw-HCW-001 カロリックランチャー】
 VCRの開発から数か月後、トロピカル・カンパニーの携行火器開発部門の中でとにかく兵器に火力を求める一派……
通称“起爆剤(イニシエーター)”が新人たちが開発した斬新なカロリック兵器に誘発されて、
企画したのが始まりとなる大型カロリック携行兵器。
 企画発案にはなんと扶桑皇国の連携企業たる宮菱重工業との共同で行われた。
宮菱重工業にはトロピカル・カンパニーの起爆剤たちに触発された火力上等主義なスタッフが数多く在籍しており、
水面下で彼らの間で話が進められていたらしい。
 起爆剤たちは宮菱重工業の、火力上等主義な新人たちを招き入れ、共にとにかく
火力を持ったカロリック兵器の企画発案をジ・エーデルに訴えた。そう、彼らは過去にデュノア社と行った
共同新人研修イベントを自分たち、いわば現場の人間でやってのけようと考えたのである。

 まさに現場の暴走である。しかも連携するほどの親密な仲とはいえ他国の大企業と……が、
これに対してジ・エーデルは「面白い、よくやった、やれ」と一言で快諾。
 片手間で宮菱重工業の上層部と話をつけ、かつてデュノア社と行った突拍子もない
イベントを僅か数か月の時間で繰り返す事となった。

 さて、宮菱重工業の“話の分かる”新人たちを招いて起爆剤が考える事は前述したように、
とにかく火力を至上とする兵器の開発である。
 そのために当然、本体は大型化を辿り、携行性や整備性はある程度無視して
ひたすら火力を求める一本道っぷり……となる所であったが、宮菱重工業から
やってきた若きスタッフたちが「せめてウィッチたちに持たせられる程度に抑えてくれないか?」と
頼み込んだ事で、最低限のラインが設定(死守?)された。
 この点は相当に新人たちが熱弁を振るったとのこと、宮菱重工業といえば
アジアにおけるストライカーユニットの開発最大手、当然そのスタッフたちは大なり小なり
ウィッチたちを意識している者が多い。
 そして集められた新人たちは確かに火力のある兵器は好きだが、それ以上に
ウィッチたちの大ファン――とまあ、端的に言えばそういうスタッフたちであった。

思わぬ奇襲を受けたような起爆剤たちだったが、
その反応は「我々の可愛い後輩にあたる者たちの願いを無下にできない」と考える者もいれば、
「まあ多少は課題があった方が開発は楽しいからいいか」という考えを持つ者もいた。

 ともかく起爆剤は新人たちの意見を好意的に受け取り、開発が進められていく、
その段階で、当時手が空いていた先の共同イベントに参加していたトロピカル・カンパニー側の
新人たちを無理矢理引き込んだりして人員を増やしていった。

 そうしてカタチとなったのが大型カロリック携行兵器、カロリックランチャーである。
 ランチャーと名付けられているように本兵器はモデルとしてロケット弾発射器――すなわち、
ロケットランチャーをベースとして設計されている。
 そしてそのロケットにあたるのが本兵器でいうところのカロリックなのだが、
起爆剤はカロリックを内包するC-Pack、それの丸々ひとつを爆発弾として射出するという豪快な方針を取った。

 発射プロセスは、砲本体の後部から五連に繋げられたC-Packを装填、
装填されたC-Packからカロリックを解放し、VCRと同様にグラビコン・システムが搭載された加速器で、
パック一つ分のカロリックを“回転させながら圧縮していく”
 これは所謂“コイルガン”と同様のプロセスを踏んでいる。このような仕様にした理由は、
VCRのように少しずつC-Packからカロリックを供給していくスタイルとは異なり、
こちらは丸々ひとつ分使用するため同銃の発射プロセスでは圧縮力が不足していたため。
 グラビコン・システムとは別に、回転の力を加える事でより圧縮力を高め、
またそれを解放する際にその反動で弾速を得る事も念頭に置いていた。

 元より開き直った設計のため、やはりというか本体は大型化、それでも宮菱重工業スタッフが
熱望したウィッチたる彼女たちが両手と肩で支えて持ち、使用する分にはさほど問題ない程度には落ち着いている。
 むしろ、ロケットランチャーの類を使用するウィッチたちからすれば、
本兵器は高威力の割に軽い(本体こそ重いが、ロケット弾の分の質量がないため)、何より再装填が容易なのがいい、
弾も軽いし持ちやすい(本兵器に使われているC-Packひとつの重量は約200gである)と大好評であった。

 回転を加える部分が半円状に盛り上がっているため、愛称として“カタツムリ”と呼ばれる起爆剤の信念と、
それに連なる宮菱重工業のウィッチたちを愛する若きスタッフたちの愛が融合した本兵器は、
いざ生まれてみれば名兵器と称されるに相応しい性能を持っていた。
……開発コスト、そして量産体制に入っていたとはいえ、まるまるひとつのC-Packを消費する劣悪な運用コストを無視すれば、だが。


【熱穿刀(カロリックブレード)】
 正確に言うと、本兵器はトロピカル・カンパニー製ではなく、同社の技術スタッフの協力の下に
宮菱重工業が完成させた兵器――というより武器である。
 その名の通り、カロリックを近接兵器として転用させて生まれた片刃刀(ブレード)、
扶桑皇国出身のウィッチがよく扱う扶桑刀をベースに開発された。

 カロリックの極めて高い汎用性に目を付けた宮菱のスタッフが扶桑の魂こと扶桑刀と、
EOTたるカロリックの融合が目的とされている。
 技術転用試験目的での開発であり、量産前提に入ってはいないものであった。

 カロリックそのものの生産についてはトロピカル・カンパニーのみが可能な技術であり、
かつその運用方法をよく理解しているのは同社であるため、必然と協力体制が敷かれることとなったが、
従来とは異なり、この体制は宮菱が主導となった。
 もっとも、両社ともに本武器に大きな採算性を見込んでいたものでないため予算は最小限、
トロピカル・カンパニーから送られたスタッフも少ないものだった。

 ……が、その送られてきたスタッフが、かのジ・エーデルが直接に見込んだスタッフで構成され、
かの起爆剤をもってして「頭がイカれたお抱え異能集団」と呼称されるトロピカル・カンパニー随一の技能、
そして極端性を併せ持つ一派――あのカロリック・コンバーターを開発した“テクノクラート”のスタッフであった事が
新技術を求める宮菱に光明、そしてそれ以上の混乱を齎した。
 テクノクラートの人員を送り込んだのはジ・エーデルの判断とされ、最小の予算及び人数で最大の成果をあげるには、
彼らに任せる他ないという判断の下で派遣したという。
 テクノクラート側のスタッフも、扶桑皇国側のウィッチが自身より遥かに巨大な存在と邂逅する事もある
ネウロイ相手に、刀ひとつで撃墜させたケースが過去に幾つかある――という事実に興味を示し、
本計画に参加した(更に言えばウィッチそのものにも興味があった)

 そうして結成された協力体制だが、すでに求めるべきは解は明確だった。
 そもそも扶桑刀を実戦で使うのはウィッチのみである。そしてそのウィッチには今や
カロリック・コンバーターが標準搭載されている関係上、カロリック・コンバーターから
カロリックを形成した方が手っ取り早い。
 実際にそこまでは宮菱側も考え付いていた。問題はカロリックをどう扶桑刀に纏わせるか、である。

 カロリックカービンはその点を解決してはいたが、同兵器は弾頭が射出される一瞬のみに
カロリックを放出することで問題をカバーしたものである。
 一方で、今回のような扶桑刀の場合、弾頭より遥かに長く大きな刀身に纏わせ、
さらにそれを振るうまでの経過時間を考えると、刀身が融解、変形を起こすのは目に見えていた。
 だが、カロリックコンバーターからなる魔力弾としての応用から、
魔力による操作で解決できないかと見込んで進められていく。

 ウィッチによる魔力が前提とあるため、そこを着目したテクノクラートはある個体の能力を応用した。
その個体――それは聖杯戦争において英霊(サーヴァント)として使役された個体、
かの有名な騎士王が持つ能力“魔力放出”である。
 テクノクラートは同英霊の能力こそが本武器に相応しいと悟り、これを再現する事を決める……
そう、異能集団と呼称されるように、テクノクラートの実態は技術者集団であると同時に魔術師集団でもあった。

 刀そのものに、ある組織から齎された異端技術である“擬似魔術基盤”と“擬似魔術回路”をプリントし、
使用者たるウィッチの魔力を魔術回路が吸い上げ基盤が起動、同時にカロリックコンバーターよりカロリックを形成し、
それを組み込まれた魔術によって“カロリックの熱負荷による融解への事象回避”を行い、刀身にカロリックの熱を纏わせた。
 さらにカロリックを刀身の反りの方へ集中させ圧縮、噴射させることで騎士王の魔力放出とよく似たプロセスを実行、
刀を振るう速度にブーストかける事が可能となった。
 魔力によって操作されたカロリックによるブースト、さらにカロリックによる高熱を纏う事での
ダメージの増加……ひとまず図面上では完成形と相成った。

 ……そう、ここまではあくまで図面上のものである。本体制の主体はあくまで宮菱側にある。
当然というか、あまりに異端な技術(というより魔術だが)の結晶と化した扶桑刀に彼らは言葉を失った。
形容も摩訶不思議な回路じみた紋様が刀身に浮かんでおり、正直不気味という他になく、
まるで妖刀のようだった。と当時の宮菱側はコメントしている。

 ウィッチの事は存じている企業ではあるが、それより遥かに怪奇的な魔術回路やら
魔術基盤やら未知に溢れる概念に、宮菱側は頭を抱える事となる。
 なおテクノクラート側は新開発の魔法支援機構と言葉を濁している――因みに、
単に刀身にそれらをプリントするだけなのでコストは無しに等しいとか。

 が、最小限の予算でここまでのモノを見せられたら、そしてこれ程のモノ、技術者として
一度は生産していみたい――テクノクラートへの申し訳なさ(もしくは恐ろしさ)もあり、
宮菱は彼らの図面通りに刀を作成していく(回路や基盤はテクノクラートが組み込んだ)。
 そうして生まれた本武器を、扶桑皇国有数のさる扶桑刀使いのウィッチをテスターとして招集、
使用させた結果……20cmもある鋼鉄板を容易く切断し、それでいて刀身に刃こぼれ一つすら起こさない、
まさに“魔刀”が完成してしまった。

 結果は……一応の成功を見た。
 しかしあまりに異様な姿、そして異常な力を得て変容、あるいは変異してしまった
その扶桑刀だったナニカに、宮菱側、そして他ならぬテスターのウィッチまでもが萎縮してしまう。
 強力ではある、あるが……それゆえに、未知の概念が盛り込まれたその魔刀に危機感を抱いた
宮菱は(元々試験目的であったこともあり)開発を停止、予定通り量産される事はなかった。

 だが一度生まれてしまった魔刀は元には戻らない。
 現在、宮菱の倉庫の奥で試作された数本の魔刀――熱穿刀(カロリックブレード)が静かに眠っているという……。



  • 最終更新:2019-03-13 21:14:39

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