0208【鉄騎尖(アイアン・ギアー)】

 弾かれたように飛翔する攻城兵器が薬液の詰まったタンクを支える柱に直撃。その衝撃で支柱はへし折れ、タンクは轟音を立てて落下しラボ中を転げ回る。時を同じくして、地下と地上を繋ぐ階段を創作中の燕が忍結界の発動を感知。二人ははいつの間にか武装研究員と悪忍に包囲されていた。コンセントレーションが乱れた今、防あ御魔法が使えないスバルを庇いながらの四方から銃口を向けられていて、何気に絶体絶命の大ピンチであるが、包囲網が背後から破られる。二刀のブレード煌めかせ帰還した燕。経路確保を聞かされた倶利伽羅はスバルと共に避難経路の確保に再度向かうよう指示を出す。スバルが落ち着くまでの間、“一人で暴れる”と宣言した倶利伽羅。無茶を諌め助力を申し出る二人だが、「巻き込みたくない」の一言で押し黙る。

 それにはまずこの包囲を真っ正直から突破する事が必要になるのだが、倶利伽羅は金属操作能力で先に折った支柱を引き寄せ、それをぶつけて包囲を割り、その隙に二人を脱出させる。そして、360度全て敵と言う窮地にひとり残された倶利伽羅は、手袋を外し鋼鉄の義手を露にする。その意味を連中は直ぐに思い知る事になる。真に窮地に立たされていたのは、他ならぬ包囲している自分たちであると。何故なら倶利伽羅が本気で握った拳は、鉄塊、ハンマー、鈍器そのもの。手袋を外したのは、侍が鞘から刀を抜くのと同じかそれ以上の危険を意味する。

 悪忍も武装研究員も厳格なマニュアルに則った戦闘訓練を受けていなければ一撃で戦闘不能、よしんば重篤な後遺症は必至。一切の加減を考えない壮絶な攻めは、夢が丘の前で見せたあの時以上の憤怒が原動力。超人的な反射で、改造スタンガンも捕獲用ネットも散弾も回避或いは最小限の被弾覚悟での前進で押し切る。

 隊長格と思われる顔の上半分を覆うスコープを装着した武装研究員の一人が「檻を開けてこい!」と指示。数人が去ったその後まもなく、突如倶利伽羅を襲う巨体。鉄筋で強化したコンクリート床を割るほどの重量と筋力を持つ複合魔獣が倶利伽羅にのしかかる。

 しかし、その重量故咄嗟に突き立てた支柱に心臓を貫かれ即死し、そのままぐらりと横倒しに。倶利伽羅は二百キロはゆうにあろうその亡骸を、無造作に見える遠心力を使った独特の挙動によって音のする方向へ投げる――歩み寄る同じ姿の合成獣の群れに向かって。しかし、流石に勢いが足りなかったか魔獣の腕一振りで亡骸は明後日の方角へと打ち飛ばされる。




  • 最終更新:2018-11-08 22:45:36

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード