0207【地下魔獣工廠】

 開かれた扉。そこに広がるのは和環に展開されているものとはかけ離れた、高い文明によって構築された研究施設。しかし、そしてそこで研究対象とされていたものとは


「これが――人間の――やる事かぁ!!!!」


 命。

 かけがえのないもの。失われてしまえば、二度と元には戻らない、金でも買えない唯一無二のもの。

 此処はその命を弄び、解し、人の手で歪なモノへと造り変える場所。

 製造されるのは、動物や植物と言った有機物に珪素や鉱石または特殊合金などの無機物を細胞レベルで無理矢理結合させた機械生物や、生物同士を掛け合わせて生まれる人造合成獣。自然界に存在する事を決して許されない、許されてはいけない存在。その名を『魔獣アド』。おぞましき人の欲と咎に塗れたこの地下工廠に、倶利伽羅の怒りの叫びがこだまする。

 目に映る光景が受け入れられず錯乱しかけるスバルに気付けを施し、倶利伽羅は指先で大きな矢印を空に描く。仄かに光る矢印は徐々に強く光を放ち出し、火尖槍の時と同じように空中に現れる設計図。だがその違いは規模、直径は1メートル近い。

 設計図は倶利伽羅の錬を纏いその輪郭を明らかにしてゆく。現れたのは全長2.53メートル、直径0.96メートルの巨大な鎗――否、そもそも鎗かどうかすら分からない鉄の塊。宙に浮くそれをゆっくりと手元に引き寄せると、頭上に鎮座する巨大なタンクに心の中で照準を合わせる。

「『鉄騎尖(アイアン・ギア)』――!!」




  • 最終更新:2018-11-08 22:38:29

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