0132【いざ、光子力町へ】

 翌日、電車を乗り継いで倶利伽羅たちは練馬区光子力町へと到着した。そして、町の景観を見て愕然とした。

 一言で言うなら「人が住んでいる現代文明の廃墟」。

 商店街も住宅もビルも電柱さえも、何もかもが半壊状態なのである。自然にこうなったのではない、何度も何度も壊されては直し(スクラップ&ビルド)を繰り返し、そのうちに最低限必要な修理の線引きが出来たような状態。外壁もすきま風さえ防げれば完璧に補修する必要は無いとでも言うのか。あらゆる意味で恐ろしい、光子力町の洗礼であった。一行はその足で光子力研究所に向かい、研究所の職員との面会を求めようと試みる。その途中、再度電話してもやっぱり話し中であったが、ここまでタイミングが被るのはどう考えてもおかしい。着信拒否されているのだろうかと思い悩むうちに研究所の前までやってきた三人。門を潜るが外には誰もおらず、施設内に成り行きとは言え無断で入って大声で呼び掛ける。

 すると、白衣を纏った三人の少女が奥から現れた。見た目は幼いが全員成人らしい研究員に鋼家の名刺を渡し、光子力エンジンについて詳しく話を聞きたいと申し出る。久々の顧客に色めき立つ三博士は光子力研究所内部を案内しながら光子力の性質などを簡潔かつ丁寧に説明。これまでに調べた動力源及び原動機を凌駕するスペックを誇る光子力を倶利伽羅は大層気に入り、鋼家の運営資金全てを叩いてでも欲しいと意欲を示す。

 だが、そこで三博士の表情が曇る。所内の惨状からお世辞にも儲かっているとは思えない光子力研究所にとって、これは決して悪い話では無い筈だと事情を尋ねる倶利伽羅。すると、契約締結に関わる権限を持つ博士が数日前から資金繰りの為に外回りに出掛けたまま行方が分からなくなり、連絡も取れないとの事。最初は誘拐かと思ったが身代金の要求も無く、かと言って警察に頼ろうにも"悪名"が祟って相手にしてくれないそうなのだとか。

 そこで倶利伽羅は、自分たちには依頼として博士の捜索を請け負う準備がある事を告げる。依頼料は光子力エンジン或いは契約金の値下げ分で後払いでと言う話に、博士の不在が早期解決するのならとそれに応じる。ちなみに電話が繋がらなかったのは単に受話器を戻してなかっただけだった。その後直ぐ、院長と子供たちに久しぶりの大型依頼で暫く帰らない事を伝え、その分土産をたっぷり持ち帰る事を約束。まず三人は光子力町での活動拠点を探す事に。




  • 最終更新:2018-11-01 19:46:26

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