0130【pride of rescue's】

 ミュルミュイルの目的は夢が丘の子供たち。「取って喰う訳では無い、生き血が欲しいだけだ」と悪びれる事も無い口調に怒り心頭のスバル。彼女の要求する血液量とは凡そ人体の致死量とされる半分だからである。「命を直接奪いはしないがその後血が足りずくたばるのは妾の預かり知らぬ事、そもそも血が半分無くなったくらいでくたばり損ないの人間がそうそう簡単に死ぬものか」と本気で言い放つミュルミュイルの傲慢な物言い、人命救助を本業とするスバルにとっては到底聞き捨てならぬ妄言にして暴言。

 最後の一人を助け出し、これで思う存分戦えると触手の群れに向き直り、構えを取るスバル。次々とけしかけられる触手を芯で捕らえ不定形の触手に打撃によるダメージを与えていく。が、突然背後から子供の泣き声が聞こえる。逃げ遅れがいたのかと振り向くが、触手の先端に唇を模した花が発したダミーであった。生じたその隙を見逃さず、ミュルミュイルの触手はスバルの両腕を捉え、その動きを封じた。ミュルミュイルが地下から呼び出した別の形をした触手が先端より何かを射ち出す。炸裂弾のような特性を持つ種子が着弾、体表で弾けスバルは思わずうめき声が上げる。どうやら、魔力に反応して弾けるらしい。しかし防御に回している魔力を断てば、自分の胴体など易々と貫通する。まだ炸裂させた方が傷は浅いとスバルは防御に徹し、ひたすらに耐える。

 ミュルミュイルをはじめとする妖魔にとっては人間の扱いは「食糧」が大半を占める。その際、人間が抱く感情によってその味や栄養が変わると言うのも共通の認識らしい。ミュルミュイルの好む感情は哀しみや嘆き、恐れであり逆に怒りや憎しみ、我慢と言った強い感情は口に合わない。従って、今のスバルは全く甘(うま)そうに見えないのだった。元々短気な上に募る苛立ちから、触手を操って壁に叩きつけようとする。

 しかしそれを逆転の好機と見たスバル。マッハキャリバーとコンマ数秒で意志疎通を図り急加速、その場で高速回転を始める。力を籠める為に弛んだ触手を引きちぎり、目を回す無様を晒す事も無くミュルミュイルの本体に急接近。リボルバーナックルが顎を撃ち抜く。触手が一斉に脱力し床に落ち、主も玉座から叩き落とされた。打たれ慣れていないのか、それとも今の一撃が素直に効いているのか態勢を整える様子も無いミュルミュイルに対し、スバルは追撃を試みる。ここで繰り出すは右手を前に出して魔力を絞り出し、それを拳速で撃ち飛ばす彼女の一撃必倒技・ディバインバスター。

 しかし、発動直前に突如脚を襲う鋭い痛みが彼女の直立姿勢を崩す。竹のように硬質化した触手が後ろから大腿部を貫いていた。静脈を傷つけたのか激しい出血が起こっている。それを魔力によって一時的に止血するがそれに意識を集中した事で、今度は四肢を縛られマウントを取られてしまう。




  • 最終更新:2018-11-01 19:44:11

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