0100【人艦一体】

一方、瑞浪家に到着した義経は屋敷全体に張られた結界に手を焼いていた。攻撃で破れる次元とは思えない強固さに内部への侵入を阻まれ、海珠の救助に行けず苛つく後ろ姿を何者かが蹴撃。追いついてきたベルが義経を足蹴にしながら結界を「月匣」と忌ま忌まし気にそう呼ぶと、手をかざし詠唱を開始する。掌に集積されてゆく魔力量たるや、これまでの戦いで彼女が見せた量の10倍では利かないのではないかと思うほど。義経は、ベルに対し味方としての頼もしさよりも単純な脅威を感じていた。

「ディヴァイン・コロナ!」

 掌から放たれた、太陽を思わせる巨大な光の球が門に向かって一直線に飛来する。家屋までもを巻き込みかねない威力に義経の制止が飛ぶが、性格が豹変するほどのトランス状態のベルの耳には入らない。

 光球は直撃したものの結界に阻まれ家屋に被害は出なかった。舌打ちするベルだが、結界には亀裂が生じそこから水が漏れ出している。不審に思って近付いた義経はそこから内部に蓄えられた大量の水が決壊したダムの如く噴き出し、ベルもろとも飲み込んだ。水が引いた後、ベルの様子は元に戻っていた。

 道場の水位が目に見えて下がり、黒い塊はあからさまに動揺の色を見せた。だが、本当に驚いている理由は他にある。

 目の前で闇の深海から伸びる光。生命の迸りに満ちた眩さに、恐怖とも憎悪とも取れる反応を示す黒い塊はその光の柱の中を通って何かが急速浮上して来るのを感知。そして――

 水面を突き上げ、海珠が海上5メートルの高さまで飛び上がり、着水。それだけなら不思議では無いのだが、ここは今だ底知れぬ海の上。彼女は今、水面に『立っている』。

 寝間着のはずだった服装は、紅色の水干状の上衣に黒いスカート。襟首には赤い勾玉が飾られ、頭部には艦首を思わせる鉄製のサンバイザー。腰には「三式携帯艤装」と書かれたポーチ。そして、高下駄のような厚底ブーツで水上歩行を可能としているようだ。

 海珠は今、航空母艦『龍驤』とひとつになっていた。千切れた体も完全に元通りとなって。

next:[[]]

  • 最終更新:2017-10-29 22:22:45

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード