0060【倶利伽羅の「闇」】

 その後1セット10~30分程度の組み手数回を経て、本日のトレーニングを切り上げる倶利伽羅。まだ足りないと言うスバルを連れ、街の路地食堂「ごんぶと」へ。荒っぽく迎えてくれた親方が、余り物で作ってくれた賄い飯は、疲れた体に染み込む優しくも濃厚な味わいの海鮮雑炊だった。

 少し前から顔見知りになって以来こうして賄いを食わせて貰う見返りに厨房設備のメンテをする間柄だと言う二人。すると親方、倶利伽羅に煙草の買い出しを頼み外へ出す。そして、スバルの方に向き直ると「(倶利伽羅の事を)呉々もよろしく頼む」と頭を下げる。きょとんとするスバルに、親方は初めて会った時の話を始める。未だ荷車で食材運搬をしている親方は、信号待ちの時に暴走の末に転倒して突っ込んで来るバイクから助けられた縁で倶利伽羅と知り合ったのだが、その際に自身の安全を省みない倶利伽羅の「闇」を垣間見たと言う。

「滅私とか自己犠牲なんて、そんな生易しいモンじゃねぇ・・・ありゃテメェから危険に頭から突っ込ンで、まるで自分で自分いたぶって苦しめてるみてェだった・・・人助けはそのついで、って感じでよォ」

 スバルは半信半疑だったが、親方の言葉は決して無視できない。「それを無理矢理自分に課している節がある」と付け加えられては、尚更である。親方の熱意に押されたのもあるが、その頼みを承諾するスバル。些か安請け合いのようだったが、数日後彼女はこの約束に大いに苦しめられる事になる。



  • 最終更新:2017-12-27 21:09:32

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