0052【火尖鎗】

 あの一撃を受けてなお臨戦態勢の剣士を前に並び立つ二人。倶利伽羅はスバルに、「今の拳打が全力か否か」を問うと、「本気はあんなものじゃない」と頼もしい返事が帰ってきた。愉快そうに口元を歪め、倶利伽羅は前衛に立つ。「これから隙を作るから、そこに全力を叩き込め」と言い残して。

 これまでの戦いからの経験則と自身の体調から鑑みて、真っ向から挑むのは得策ではない。ならばアウトレンジから――しかし決定打となりそうな飛び道具など手持ちに無いし、錬は半分生命エネルギーなので効果が薄いどころか敵を回復させかねない。この相性の悪さを前に、どうするか――

「創れば、いい!!」

 そう呟き終えるより早く、倶利伽羅の指が虚空に一本の線を描いていた。

 一本の線は、立体の設計図を象るネオンサインのような残光となる。それが描くのは長い一直線。そしてその光が消えた後に、倶利伽羅の手の中には、一本の深紅の槍が握られていた。

『火尖鎗』。

 中国の殷周易姓革命を舞台に、仙人や道士、妖怪が人界と仙界を二分して繰り広げた大戦争「封神演義」において崑崙の仙人・太乙真人が弟子である哪吒に与えたと伝えられる、穂先から炎を噴き出す宝貝の一。

 穂先に炎灯る火尖鎗を一薙ぎ、放たれる火球を剣士は難なく弾く。だが、第二陣の用意はもう終わっていた。百をゆうに超す炎の群れが倶利伽羅の周りに浮く形で。


  • 最終更新:2017-03-26 21:17:38

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