0044【鈍色の孤影悄然】

 拮抗する互いの力。二人は拳を引き、第二撃の準備に入る。そして咆哮を絡ませ合い、二度目の激突に――

「この大馬鹿者が!」

 割って入った弦十郎が二人の拳を両腕同時に受け止めた。そしてその剛腕を倶利伽羅に向けるが、外套で受け流され大きく間合いを離される。停戦にへたりこむ響を介抱する翼、響の消耗振りから倶利伽羅の力を推し量り、驚愕した。

 弦十郎、激しい剣幕で詰め寄るが何も言わずに逃走した倶利伽羅を指名手配し緊急配備を敷こうとし、片や倶利伽羅をノイズに並ぶ脅威と見なし追跡の為に詠唱を始めた翼を、響が止める。彼女は先に拳を合わせた際、倶利伽羅の心が流れ込んで来たのを感じたと言う。

 倶利伽羅は響と戦いながら、自身の喪った記憶の"負の部分"と云うべきモノとも決死に戦っていたのだ。記憶が無いが故の孤独と、記憶が戻った時、もし自身の正体がもし人類に仇なす者だと判明したらと言う恐怖。そして響の強さへありったけの敬意と、同じだけの感謝、そして一握りの驚愕も感じたと言う。

 誰かに弱さを見せる事も出来ず、繋がりを求めたいのに突き放さなくてはならない矛盾。今にも発狂しそうな絶望と辛苦に耐えながら自分と戦っていた倶利伽羅の心を垣間見た響は、涙を流さずにはいられなかった。


  • 最終更新:2017-03-27 03:18:10

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