0042【極神聖帝の槍(ガングニール)を宿す者】

 この立花響と言う少女は、これまでノイズと戦う為に学び、磨き、功夫を高めてきた。全ては誰かを守る為に。それなのに、その守るべき人間相手に拳を振るわなくてはならない現実は、彼女の心に戦いで傷つくよりも堪え難き苦痛を強いる。それでも身についた技術が、反射的に倶利伽羅の攻撃を弾き、開いたガードに重い一撃を突き刺す。

 苦悶の表情を浮かべる倶利伽羅に響は、つい身を案じる言葉をかけてしまう。戦う相手から気遣いを受けたやるせなさを僅かに表情に出し、倶利伽羅は意識的に自身の身体のリミッターを外す。スピードが目に見えて上がり、攻撃にも怯まなくなる。それに反比例してか響の表情はますます悲壮なものへ。

 幾多の攻防を経て倶利伽羅が繰り出した正面からの大振りの掌底。躱せない状況で放ったそれは、響から防御以外の選択肢を奪っていた。身長170センチ程度の、格闘家としては決して恵まれない体躯。しかし自分よりは大きな体と握力と拳速が威力を補う一撃は、響の体を防御ごと吹っ飛ばす。転倒した響を見下ろす倶利伽羅は彼女にシンフォギアの装着を薦めるが、当然拒絶される。

 しかし、今の倶利伽羅は響の本気を引き出す為なら――

「問答無用だ」

 突然、洞窟の天井を補強する鋼材の一部が落石と共に響の上に落下。逃げ道を失った彼女は、涙溢れる目を伏せ、静かに詠唱を始める。



  • 最終更新:2017-12-24 21:24:05

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