0037【玄烏(ヒュッケバイン)】

 額の鉢金で受け止められるも、脳をゆさぶる程度にダメージは与えた模様。ふらつく足に反撃の糸口を見出だした倶利伽羅、力を振り絞る。鉄鞭を手放し無呼吸で繰り出す烈火の如く猛攻は、先程までの若武者の回転数にも匹敵する。それも、四方を駆け回る速度までも上昇していた。まるで空を駆けるように。

 踵に羽でも生えているかのような軽やかなその動きの秘密は、彼の履く草履。その側面に走る光の帯が力場を形成し、空中移動を可能にしているのだ。

其は、ギリシャ神ヘルメスの空飛ぶ金のサンダル『金色の翔靴(タラリア)』を模して造られた、重力遮断効果を持つと言う伝説の金属「精霊銀(オリハルコン)」を素材とする脚絆。その破片が編み組まれたる黒い草履。持ち主が非業の死を遂げる逸話にちなみ、その名を不幸を招く鳥―『玄烏(ヒュッケバイン)』と名付けられた空飛ぶサンダル。

「――神楽流拳華・炎業(えんごう)!」

 倶利伽羅の義手が、両の拳がかち合い火花を散らす。そしてその火花が発火を誘い、倶利伽羅の拳に乗って爆炎纏う連撃となる。手応えはあったが、必殺の間合いで仕掛けたつもりの止めの一発は空振り。

 宙に逃れ倶利伽羅の背後数メートル先に着地する若武者。追撃せんと踏み込んだ足元が突如爆発、その隙に更に距離を取られる。そして、その傍らにはもうひとり別の人影が。


  • 最終更新:2017-03-23 18:21:38

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