0034【疾風の用心棒】

 突如、鬼の手元で突如起こるつむじ風。上着を早脱ぎして鬼の手の中から逃れた倶利伽羅。鬼の反撃は折り込み済みであり、ずれた鉢巻きを調えつつ大きく深呼吸。眼前に迫る鬼の前で手に持つ鉄鞭を宙に投げ上げ、手を空にする。そして――

「――おらおらおらおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 飛び上がりアッパーで顎を突き上げられ、宙に浮いた鬼の全身に文字通りの鉄拳乱打。十五秒は続いた長いラッシュの間に繰り出された拳は四十を超えており、空中で落下の重力と拳の威力に挟撃され続けた鬼はもうこの時点で反撃の余力は削がれていた。そして、落下して来る鉄鞭を一瞥もせずキャッチし、助走無しだが地面が鳴るほどの踏み込みで放つ零距離刺突は、鬼の臍に炸裂、後方数メートルまで吹き飛ばされる。そこには淀みによって開いていた孔を浄化し、閉じる為に倶利伽羅が仕掛けた装置から噴出する聖水の霧が。それに触れた鬼の体は感電したかのように痙攣し、激しい蒸発音が響く。

 倶利伽羅は戦いの中でこの鬼がヒエラルキーの下位に当たる存在、いわゆる下っ端だと推測した。境界線が曖昧になっている今、人間の住むこの世界を侵略しようと尖兵を送り込んできた連中がいる。それがこいつだと考えていた。このアニメみたいな話を、本気で現実に起こっている事だと信じて疑わなかった。

「帰って親玉に身の程を知れと伝えてくれ、それとこの街にちょっかい出すとこうなるってな――今、この街には疾風(おれ)がいる」

 そう締め括られた彼の言葉に激昂とも恐怖とも取れる激しい咆哮を残し、鬼は孔と共に姿を消した。跡形も無く。一息つく間も無く機材の片付けをしながら倶利伽羅は今回の戦いを振り返る。被弾こそしなかったものの、言う程弱くは無かった。決して楽な相手では無かった、ただ「やられる前にやる」と言う策が決まっただけだった。

 それも踏まえ、最後に「人手が欲しい」と呟く倶利伽羅だった。


  • 最終更新:2017-03-21 18:22:18

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