0032【歪曲する世界】

 院長の計らいで夜間の見廻りは周知の事となり、不審者に間違われる事は無くなって後顧の憂い無く夜廻りに精を出せると倶利伽羅。と言うものの、孤児院屋根に設置した自作の「観測器」が反応を示した観測箇所に赴き、その原因を確かめる程度の簡単なものである。

 そして今宵、倶利伽羅は日中高い数値を観測した銀岳の山中を訪れていた。現場には、陽炎のように空間を揺らがす歪みがあった。

 観測器が感知するのは「空間を歪曲させる重力」と「そこから漏れ出す瘴気(この世界のものではない大気)を感知する」、ひいては「異世界との境界線に開いた孔(あな)」。今和環を脅かしている猟奇事件の大半は、孔がもたらす異世界からの影響だと倶利伽羅は確信めいた推測で動いていた。事実、孔には良くないモノが寄って来るし、出てくる。

 あの戦いで名を取り戻して以来、「淀み」も視えるようになった倶利伽羅。淀みの残滓をサンプルに瘴気を、空間歪曲を独特の空気振動の形で感知可能な観測器を作るに至る。記憶は無いが体が作り方を覚えていた、そう感じていた。
 
 そして、観測開始から3日後。淀みと重力震が導き出したこの場所に、今夜現れたのは「孔」。陽炎が縦に割け、開いた隙間から獣臭い空気が吹き込む。その奥の闇から、人外の眼光がこちらを見ていた。


  • 最終更新:2017-03-21 17:29:11

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