0027【七色の街は絶望に沈む】

 鋼家開店から三週間。院長の紹介で受けた依頼をいくつもこなすうち、口コミで名が広まり一見からの仕事もぼちぼち舞い込むようになる。生計として成立しつつある鋼家。家賃代わりに生活費を院に納めても、まだ懐に余裕のある状態である。しかしそれに慢心せず、記憶の手がかりを求め倶利伽羅は今日も仕事に精を出す。

 そして今日、和環から少し離れた七色ヶ丘市。山中にて幻の薬草探しに励む倶利伽羅、ふと上空に何かを感じ取る。が、現状それが何かは解らない。そしてその後すぐ世界を超えたある運命的な出会いがあった事など、知る由も無かった。二時間ほどで見つけた薬草は依頼主である薬局の主の元に無事届け、商店街を歩く倶利伽羅。すると、少し先にある書店の本棚から突然少女が飛び出すように現れる。そして、羊のぬいぐるみのような生き物、それを追って現れたと思われる宙に浮く狼男と、立て続けに人智の及ばぬ存在が姿を見せた。

「世界よ、バッドエンドに染まれ!」

 狼男はそう叫び、取り出した本に握り締めた手の中にある黒い絵の具をぶちまける。直後、空気が一変しその場の人間全てが絶望に心を支配されたかのように膝を折る。一瞬で思考はどん底まで墜ちていた。

「記憶を取り戻す事など不可能、何のために自分がこの世界にやってきたのかわからないまま、この世界で一生を終える」

 倶利伽羅も例外ではなく、現実への諦めが心を蝕んでいく。怒りとは違う、黒く得体の知れない何かに精神を侵される屈辱。それに屈しかけた自分への怒りが辛うじて自我を保っていたが、陥落も時間の問題だった。


  • 最終更新:2017-03-13 22:25:23

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード