0026【『鋼家』、開店!】

 院長の淹れたミルクコーヒーを飲みながら、静まり返った病院のロビーで対面する二人。開口一番、倶利伽羅は「我(おれ)の記憶は戦いの中で蘇る」と告げる。

 夢と現両方に出てきたあの白い少女の話にあった"何かを成し遂げる為に名前ごと記憶を失いこの世界にやって来た"と言う突拍子も無い話を、院長は静かに聴いていた。そして今、和環で起こっている異変。突然目覚めた異能の力。それらの関連性を強く訴えると共に、その解決への行動こそが唯一記憶を取り戻す手段だと確信を持ったと心境を明かす。そして次の言葉を口にしようとした時、院長は倶利伽羅の手を取って一言。

「あなたは、あなたの心のままに在りなさい」

 これから倶利伽羅が掛ける苦労と迷惑、その全てを何も言わず呑み込むと言う無言の信頼の意思表示。倶利伽羅は静かに、そして大きく頭を下げた。

 それから、院長の人徳による孤児院再建への寄付や助力の申し出が暇無く続き、翌日から再建作業が始まった。丘にテントを張って孤児らを寝泊りさせながら倶利伽羅は不眠不休で働いた。その甲斐あって、孤児院は僅か一週間で建て直された。

 以前の教会と寸分違わない造りに見えるが、反対側に回ると以前には無かったもうひとつの入り口が。その上には、院長が懇意にしている職人がわざわざ拵えてくれた焼き杉の看板に白い筆で『鋼家』と書かれていた。

 倶利伽羅が所長を営む異変解決稼業『鋼家』、本日開店である。



  • 最終更新:2017-12-24 21:02:44

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード