0022【白い少女】

 再び目覚めた少年の意識は白い空の下に。早苗もノイズも英雄も鎧をつけた少女たちもいない、無色透明の空間。

 ここはきっと、時を刻む事を忘れてしまった世界。

 体は動かない。意識はある。両腕は無い。痛みも無い。それどころか全身の感覚の有無がわからない。

 そんな時、視界にひょっこり現れた少女。よく見れば、以前夢の中に現れた少女と同一人物。しかし毎度毎度どうしてこうも不機嫌そうなのか。

「主殿様、やっと話が出来るな」

 今度ははっきり聞き取れた。

 時代がかった口調で語る少女の言葉を要約すると「お前は名を奪われてこの世界に連れて来られた。私はその名前を知ってるはいが、教えてはやれない。この世界で求められている役割を果たすには、元の名前では駄目だからだ」と言う事らしい。

 それにしても、少年の最後の行動が予想通り過ぎると笑う少女。自身の安全を省みない様に呆れつつも「それでこそ、我が主に相応しい」と称賛。そう言って微笑みながら手を差し出す少女の体からほとばしるまばゆい光が世界を満たしてゆく。光の中、差し出されたその手を、少年は無くした筈のその腕で掴み――



  • 最終更新:2017-12-24 20:56:09

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