0016【格の違い】

 激怒の余り表情を失した少年と憎悪の余り口元を歪める高場。

 二人の間に言葉は無い。次、顔を合わせた時、理性を保つ気も保つ自信も互いに更々無かったからだ。

「――殺せぇ!」

 号令は下され、重機に群がる百を超える暴徒たち。その手に持つ人を殺傷せしめる凶器は、たった一人の少年の命を奪う為に。全方位から殺気混じりの怒声が降り注ぎ、丘を揺るがす。

 だが少年は嗤(わら)っていた。それは戦いの高揚感からか、心の中の黒い獸を解き放つ好機を獲(え)たからか。

 群がる敵を背に横倒しになった重機からシート部分をむしり取り、それを武器代わりに振り回す少年。シート部分とは言えそれなりの重量がありそこに遠心力が加わる。それが躊躇いゼロで突っ込んで来る。チンピラが鉄パイプや釘バット、バール程度で太刀打ちできるものでは、否。太刀打ちしていいものではなかった。
それなりに場数を踏んでいる不良百人近くがほんの数分で半数が沈黙。未だ無事な生き残りも既に戦意喪失し、戦線崩壊は時間の問題と言えよう。

 数の差を埋めて余りある個の力。「格が違う」、全員がそう痛感し、誰もが負けを疑わなかった。逃げ出す者すらいた。

 ・・・ただ一人を除いて。


  • 最終更新:2017-02-28 22:07:38

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