0008【戦闘争本能】

 夢ヶ丘で迎える30日目の朝。院長の供で参加した教会のミサは筆舌し難い居心地の悪さから早々に退出。外の空気を吸っていると、教会の裏でかつあげの現場に出くわす。

 やれやれと口ではいいながら、どこか気が浮ついている少年。体を動かす言い訳が出来たと不謹慎な事を考えながら仲裁に入る。まずかつあげ犯に神経を逆撫でする言動を敢えて選び、自分に注意を向けさせる。沸点の低い不良らが面白いほど単純にそれに掛かった隙に、被害に遭っていた学生らに逃走を促すサインを送る。もう一言二言を掛ければ、もう誰も彼らを見ていない。学生らは逃走に踏み切る。途中、足の遅いのがつかまりかけたが、少年が靴の踵を踏んで阻止。見事脱出に成功する。

 獲物に逃げられ憤慨する半グレ、買い物時以外金品を持ち歩かないと少年は飄々とした態度を崩さない。それが相手の怒りを煽ると知った上で。聞き分けの無い園児をあやす保父のような態度であしらい、教会の上の十字架を指差し「場所を考えるんだな」と言って立ち去ろうとするが、背後から路傍にあった煉瓦で頭を殴られる。だが、地面に倒れた瞬間から、少年は自身の記憶を一部欠如していた。

 ――気がついたら膝がそいつの腹にめり込んでいた。立ち上がった記憶が無いのに、いきなりその時点で我に返ったと言う感じである。一撃で沈められ悶絶する仲間の姿にいきり立ち、半グレ共は一斉に少年に襲い掛かる。流血しながらも多勢を相手に一歩も引かない少年は常に動きながら背後を取らせず、空手や拳闘ではない型にはまらぬ本能による立ち回り。攻撃を躱し、いなし、受け流す。そして、隙を見つけては顔面や胴体等の急所に鞭のような一撃を見舞い、着実に戦力を削いでいく。どう考えても、戦い慣れていた。自分で自分についてそう思いながら。

 やがてミサが終わり、教会から出てきた信者らが騒動を聞きつけ集まって来る。焦りと混乱が更なる怒りを呼び、一人が刃物を取り出した。


  • 最終更新:2017-04-28 23:37:03

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード