0005【持たざる者の誇り】

 自身の外見をけなされた事が許せない少年。我を忘れて、親子にゆっくり近づく。その足を、視界に割り込んで来た少女の長い髪が止めた。緑の上下ジャージと、その内側から突き破らんばかりの爆乳を持つお嬢様のような少女が、親子の暴言を咎め、仲裁に入ってくれたのだ。しかしエキサイトしている今の母親に、少女の正論は届かない。狂ったように暴言を吐き続ける。

「この子達が孤児だとして、貴方達がこの子を貶めても許される理由は何ですか?」

 侮蔑の言葉は自然とその少女にも向けられるが、突如それを上回る狂気を帯びたトーンで放たれた反論。その後に続く言葉が、親子の自尊心までも砕き尽くした。更に言葉を続けようとする少女を制止した少年、拳骨を添えて子供に「この先、今のお前のままカッコ悪い男にはなるな」と諭して、場を流す。親子はそこで周囲の視線が自分たちに向けられている事と、その視線に強い敵意が込められている事を察し、居心地悪そうにレジに並んだ。

 商品の袋詰めを済まし店を出ると、子供らが先の少女を呼び止めていた。少年も合流し自身の心中の代弁と、敢えてあのタイミングで割り込んだ少女の機転について感謝を告げる。あのままなら、醜態を晒すだけでは済まなかっただろうと。

「持たざる者の誇りをどうか失わないで」

 独特の激励をもやしと共に孤児達に贈る少女。名を尋ねられると、「詠」とだけ名乗り爽やかに去っていった。


  • 最終更新:2017-04-28 22:59:43

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