0003【喪失のmemories】

 少女に叩き起こされる夢の果てに少年は飛び起きる。見知らぬベッドの上、見慣れない古い洋風の木造家屋の部屋で。

 自分の体を探る。四肢の欠損は見られない。傷も癒えており、打ち身や捻挫・骨折と言った行動に支障を来たす怪我も無い。自分の持ち物と思わしき物は机にあった。すると、部屋の隅に白い少女がこっちを見ていた。不思議な事にどこかであった事があるような気がするその少女は無言でベッドに駆け寄り、少年にフライングボディプレスを仕掛ける。思わず苦悶の声を上げてしまうがそれを聞いて、孤児院の院長・温宮が部屋に入って少年の無事を喜んでみせた。曰く、ここは彼女が経営する孤児院の一室で、少年は実に三日間も眠り続けていたとの事。暫くして、ここに住むという孤児たちが部屋に雪崩れ込み、少年を質問攻めにするが本人はそれどころではないとんでもない状況に漸く気がついた。

「・・・我(おれ)は、誰だ・・・?」

 少年は、自身について一切の記憶を失していた。名前も、年齢も分からない。己の性別さえも総身を纏う脱衣不可の黒い繊維のせいで判断出来ず、これまた肘までを覆う脱げない手袋は特徴的ではあるが、これも素性の証明にはならない。自分が楽天的だと言う自覚を差し引いても、記憶喪失はやはりショックであった。そんな少年に、院長から居候の提案が。要するに、未成人で家無き子であるならばここに居させる理由として十分だと言うのだ。

 少年はタダメシを良しと出来ず、自身の労働力を対価に、その申し出を受ける事に。こうして、夢が丘の孤児たちに新しい仲間が増えたのだった。



  • 最終更新:2017-12-24 20:08:09

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