0001【光臨】

 和環のとある月の無い夜、天より宵闇を切り裂く一条の光が降り注ぐ。地に向かって真っ直ぐ伸びる光の柱はたった数秒間現界し、後に銀髪褐眼の少年をひとり残して消える。全身血塗れ傷だらけで、風に吹かれただけで今にも倒れてしまいそうだった。

 少年は辺りを見回す。それに呼応して周囲の闇から這い出て来る『超常の存在』たち。獣に似た姿を持つそれらが、自分の命を狙って集まって来た事を察し、少年は懐より白と黒、二挺一対の鉄鞭を取り出す。目を伏せて大きく息を吐く。そして、自分に向けられる敵意の真っ只中に迷い無く飛び込んで見せた。

 それから数刻、町は未だ静寂を保ったまま。誰もあの光の柱に気付いていない。妖獣の群れは、少年によって最後の一匹が頭蓋を叩き潰されて全滅。その遺骸は黒い粒子となって風に乗り、血の一滴すら痕跡を残さず雲散霧消した。

 そして、少年は振り絞り切った最後の力も果て、黒い鉄鞭が手の中から滑り落ちる。最早それを拾う気力も無く、ふらつく足取りで夜の闇に紛れ、消えた。

 そして夜は終わり、朝がやって来る。

 まだ誰も気付いていなかった、今日から非日常の一日目が始まっている事に。


  • 最終更新:2017-04-28 21:57:25

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