サヤ・フロストハート

【登場作品】オリジナル

『聖王のゆりかご』を発見・接収した『ジェイル・スカリエッティ』がその起動の為にと
ある次元世界から聖王の“遺物”の一つで在ッた【聖王の薄衣(ベール)】を盗掘した者を
介し手に入れ、そこから採取した幾許かの頭髪よりDNAを抽出し造り出した人造魔導師。
彼女はその内の一体で在り、“偏向”的な性質を発露した特異な存在。

 スカリエッティの目的から言えば彼女は失敗作である。何故なら彼女は『聖王の器』と
しての素養は極めて低く、『レリック』による補填を施したとしてもゆりかごの統制――
それ以前に起動すらも難しいであろうという試算(シミュレーション)が既に出てしまッていたからである。

 本来ならそのまま他の失敗作達と同じく凍結ないし廃棄される運命を辿る筈だったのだが、
彼女が発露した特異な偏向性にスカリエッティは強い興味を示した。その特異な偏向性とは
通常で在れば特定の軌道上⋯⋯それも聖王のゆりかご等の特殊な魔導適性を持つモノでしか
得られないハズの“月の魔力”の恩恵を、月と同質の天体を有する次元世界であれば
何処で在ろうとその身に受ける事ができ、その魔力の変換効率の高さは本家本元の聖王と
比しても破格の数値を示した。

 彼女の名の由来は彼女のシリアルナンバーが『38』であった事から「サヤ」、
姓の由来はその次元世界固有の植物で在る【フロストハート】という花の名から取られた。
この花は我々の知る『地球』の『月下美人』に一部似た性質と形状を有し、年に一度、
最も地上に月が接近し、尚且つ満月の時にしかその蕾が開く事はないとされる。
その花弁は月光を映し込ンだかの様な淡い銀色をしており、開花の際には仄かに光を放つ。

※他の姉妹達(ナンバーズ)と違い伊語表記でないのは、その時研究施設を設けていた
次元世界の言語が奇しくも『地球』の極東地域のソレと似通ッていた為。

 あまりに殺風景に過ぎる研究室に、当時からスカリエッティの研究助手をしていたウーノが
隠蔽処理を施していた研究施設を取り囲む様に偽装した人工森の中に自生していたソレを
気紛れで持ち込み飾っていた。サヤに器としての適性は見込めないという結果を受け、
まだ成長促進用のポッド内に居た彼女を“廃棄”しようと準備を進めていたスカリエッティが
測定機器を停止させようとしたその時、保有魔力値を示す計器が突如として危険域まで振り切り、
処理過多に因る熱暴走を起こし、あわや併設していた研究機材までも機能不全に陥るかという
事態が発生。急ぎ機器の機能を停止させ、その後事態の原因に気付いたスカリエッティは
歓喜に打ち震えながら狂笑をあげる。その際に無機質に溢れたその場所で一際の異質を
放っていたソレに目が留まったのは、運命と取るべきか因果と取るべきか。

 奇しくもその異常が起こッた日は“狂気を呼び起こしそうな程”に美しい“巨大な満月”が
輝く日であったという事である。その煌々と降り注ぐ淡い銀色にも似た光を浴びて、
フロストハートは“開花”の時を迎えたのである。

 花言葉は“儚き愛”、そしてもう一つは“心を凍らせて”である。
この花言葉を聞いたスカリエッティが、出来うるならば研究にとッて不要となる
『心』などというモノを持たなければいいのに、という身勝手な想いを込めて
これを彼女の姓とすることにした。



  • 最終更新:2018-09-08 21:15:37

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